磁石の磁力は弱くなる!「減磁」の原因と対策、保管方法を紹介

ネオジム磁石をはじめとした強力な磁石は、さまざまな製品に使われています。一見すると永久に磁力を保つように思われがちですが、実際には「減磁」が起こることがあります。減磁とは、使用環境や経年変化によって磁力が徐々に弱まっていく現象です。たとえば、わずかな熱や外部磁界の影響でも磁石の性能が低下することがあります。
この記事では減磁が発生する原因や予防策、磁力を長持ちさせるためのポイントについてわかりやすく解説します。
~目次~
磁石はさまざまな原因で磁力が低下(減磁)する
磁石の中でも「永久磁石」は、長期間にわたり安定して磁力を発しますが、必ずしも「永久に磁力が失われない」という意味ではありません。環境や使用状況によっては、減磁が生じてしまう場合があります。
ただし、日常の使用環境で急激に磁力が弱まる可能性は低いといわれています。ネオジム磁石の場合でも、減磁の程度は年間0.1〜0.3%程度とされており、わずかです。たとえ100年経過しても、磁石としての性能に大きな影響を与える減磁は、基本的に起こりにくいとされています。
それでも、磁石の種類や環境、取り扱い方によっては、磁力の低下が進む場合があります。以下では、減磁の主な原因である「外部磁界」「自己減磁」「温度変化」について解説しますので参考にしてください。
外部磁界の影響で起きる減磁
磁石は、周囲の磁界によって影響を受けることがあり、これを「外部減磁」と呼びます。特に、強力な電磁石の近くや他の永久磁石と接触・反発し続ける環境では注意が必要です。外部磁界が磁石の内部構造に干渉し、磁力を低める原因になることがあります。
このような外部磁界が磁石の磁化方向と反対に作用すると、内部の磁力の向きが乱れ、減磁が進みます。中でも、保磁力(磁力を保つ力)が低い磁石は注意が必要です。外部の影響を受けやすく、わずかな磁界でも磁力が不安定になり、減磁しやすくなります。
自己減磁
自己減磁は磁石内部で逆向きの磁場が発生し磁力が内側から弱まる現象です。
通常、磁力はN極から外部に出てS極に向かいます。しかし、磁石内部を通る方が短い道となるため、その方向に「減磁界」が生じます。この逆向きの磁場が磁力の状態に変化を与え、減磁を引き起こすのです。
減磁界の大きさは磁石の寸法や形状によって異なりますが、薄い磁石ほど強く自己減磁するため、磁力が弱まりやすいとされています。
温度の変化で起きる減磁
温度は磁石の磁力に大きな影響を与えます。高温になると磁石の内部構造が変化し、磁力が短期的または長期的に減少することがあります。たとえば、ネオジム磁石は約320℃を超えると磁力が回復しません。
一方、フェライト磁石は高温(250〜300℃)でも安定して使用可能ですが、低温(-10〜-20℃未満)では磁力が低下することがあります。
このように磁石によって温度変化に対する影響が異なるため、使用環境に応じた選定が重要です。
磁石を長く使うための注意点と保管方法
磁石は環境や取り扱いによって性能が大きく左右されるため、正しい保管と使い方が重要です。以下の点に留意して保管することが求められます。
・湿気を避ける:雨や水蒸気に触れないよう、密封保管する
・高温や特殊な環境を避ける:50℃以上や腐食性ガスのある場所に置かない
・磁界との接触を防ぐ:他の磁石や強磁界から離す
・磁石の向きを揃える:複数保管時は同一方向に配置する
・衝撃を避ける:減磁や割れを防ぐため、振動や落下に注意する
・釘やクリップなど鉄製品に吸着させて保管:磁力維持と事故防止に有効
なお、保持力や寸法などを考慮し、用途に合った磁石を選ぶことも大切です。さらに、定期点検を実施することで、減磁の早期発見と対処も可能になります。
減磁してしまった磁石の磁力を回復させる方法
減磁してしまった磁石も、適切な方法で磁力を回復させることが可能です。
たとえば、磁力を持たない釘に磁石を近づけると磁化されるのと同じ原理を使って、強い磁力をもつ磁石に吸着させる方法があります。これにより、磁石内部の原子の磁極が一定方向にそろい、磁力が戻ります。
さらに本格的に回復させたい場合は「着磁」と呼ばれる方法があります。着磁は、磁石が持つ外部の磁場によって磁化される性質を利用した方法です。具体的には、電線を巻いたコイルに減磁した磁石を置き、電流を流して強力な磁界を発生させます。この磁界によって、弱まった磁石の磁力が回復します。
磁石の劣化防止につながる加工や処理
磁石の劣化を防ぐために、表面への加工処理を行うケースもあります。主に以下の方法があります。
・メッキ加工
金属の膜を施して、磁石を腐食や傷から守る方法です。ニッケルメッキは硬くて傷に強く、耐食性も高いため、ネオジム磁石によく使われます。亜鉛メッキも耐食性に優れ、ヨーク(継鉄)などに使用されます。
・コート処理
樹脂などで表面を覆い、耐久性を高める方法です。エポキシコートは硬く密着性が高いため、はがれにくいのが特徴です。また、ナイロンコートは耐食性と衝撃耐性に優れ、破損しやすい磁石にも適しています。
まとめ
ここまで解説してきたように、磁石は基本的に長期間磁力を保ちますが、さまざまな要因により、徐々に磁力が低下することがあります。特に高温や低温、強い外部磁界の下では減磁が進みやすくなるため注意が必要です。磁石本来の性能を長く保つために、正しい取り扱いを心がけていきましょう。
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